通勤手当を廃止して実費精算にした場合の給与計算
テレワークや在宅勤務で通勤手当を廃止したら…
日本企業の大半は、「通勤手当」支給の規定を設けています。
通勤手当を支給することが一般的となっているため、良い人材を集めるには、通勤手当の支給を自社だけやめる、というわけにはいかないのが実情です。
しかし、コロナ禍をきっかけとした在宅勤務の急速な広がりにより、通勤手当を廃止し、代わりに在宅勤務手当などを支給するような例も増えています。
働き方の基本を在宅勤務に移行し、出社日に自宅から会社まで来るのにかかった交通費は実費精算にすると、所得税および社会保険での扱いはどのようになるのでしょうか。
通勤手当は所得税では非課税、社会保険では報酬扱い
通勤手当は、所得税法では、限度額の範囲内であれば課税対象にはなりません(国税庁タックスアンサー「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」、「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」より)。
これは、所得税法では、政策的配慮により、通勤手当は一定限度額まで非課税と規定しているためです。
一方、社会保険(健康保険+厚生年金保険)や労働保険(労災保険+雇用保険)では、通勤手当は報酬として保険料を計算する際の算定基礎に含めます(日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和4年度)」より)。
上記においては、通勤手当は、会社が従業員に対して労働の対償として支給する報酬であると解するためです。
通勤手当の扱い
所得税 | 社会保険や労働保険 |
政策的配慮により原則として非課税 |
算定基礎に含める |
そのため、同一人の給与計算でも、所得税の源泉税額計算では通勤手当は非課税として計算対象から除外し、社会保険の計算では含めるといった違いがあります。
在宅勤務者の出社時の交通費の扱いは?
一方、通勤目的以外の業務の上で発生した交通費は、多くの場合実費精算し、会社では旅費交通費という経費となるため、利用者に課税関係は発生しません。
社会保険においても、経費として精算した旅費交通費は従業員の報酬とはなりません。
旅費交通費の扱い
所得税 | 社会保険や労働保険 |
経費となるため課税関係は発生しない |
経費となるため算定基礎には含めない |
では、在宅勤務者がたまに出社した場合、それは通勤にあたるのでしょうか。旅費交通費となるのでしょうか。
所得税法上は、通勤のための交通費を実費精算した場合、通勤とみなして通勤手当の一部と認定する場合も、旅費交通費として精算する場合も、課税されないのでどちらでも結果に変わりはありません。
一方で、通勤に要する会社負担額を報酬とみなす社会保険や労働保険の考え方からすれば、通勤のための交通費を実費精算した場合も、報酬として認識します。
通勤手当と旅費交通費の扱いの違い
所得税法 | 社会保険や労働保険 | |
通勤手当 | 課税されない |
実費精算であっても算定基礎に含める |
旅費交通費 | 算定基礎に含めない |
実費精算した交通費でも、報酬となってしまうのです。
ただし、社会保険や労働保険でも、雇用規約上の勤務地が自宅となり、出社することを「外出扱い」とする場合は、旅費交通費として認められる例外規定があります(厚生労働省・総務省テレワーク総合ポータルサイト「テレワークを導入した際の交通費や在宅勤務手当」より)。
この取り扱いは事実認定の話となるので、導入に当たっては、まずは社会保険労務士へ相談しましょう。
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