離婚と税金
民法改正で養育費の徴収を厳格化
2024年5月に民法の改正案が成立、公布され、公布から2年以内に施行される予定です。今回の改正により、離婚した父母双方を親権者とする、いわゆる「共同親権」が導入されます。
また、養育費の履行確保に向けて見直しも行われます。
養育費債権には優先権が付与され、債務名義がなくても差し押さえが可能になります。協議・取り決めがない場合に養育費請求が可能となる「法廷養育費制度」が導入されます。
今回の改正により、離婚後の親権・養育費の実務に、大きな変化が生じる可能性があります。離婚に際して発生する金銭の授受について、税務ではどのような扱いになっているのか、確認してみましょう。
慰謝料や財産分与と税金
離婚の際に支払う金銭に、「慰謝料」があります。「慰謝料」とは、不倫や暴力(DV)などによって離婚の原因を作った有責配偶者が、離婚によって被る精神的苦痛に対して相手方に支払う金銭のことです。「慰謝料」には、贈与税や所得税は課されません。
夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際や離婚後に分けることを「財産分与」といいますが、この財産分与には通常、贈与税や所得税は課されません。
ただし、「財産分与」の額が、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産の額や、その他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合、その多過ぎる部分に贈与税が課されます。
また、離婚が「贈与税や相続税を免れるために行われた」と認定された場合、離婚によって得た財産全てに贈与税が課されます。
「財産分与」が土地や建物などで行われた場合、その時の時価で譲渡したものとみなされます。したがって、取得価額より譲渡価額の方が多い場合、差額に所得税が課されます。
なお、分与を受けた側は、分与を受けた日の時価で土地や建物などを取得したことになり、将来、分与を受けた土地や建物などを売った場合、分与を受けた日を取得日として、長期譲渡所得・短期譲渡所得の判定をします。
養育費と扶養控除
今後、徴収が厳格化されていく「養育費」とは、子と同居している親が別居している親から生活費や教育費に充てるために取得した財産のことです。通常必要と認められる範囲ならば所得税や贈与税は課されません。
なお、別居している親が「養育費」を負担している場合、その「養育費」の対象となる子の扶養控除を受けられます。
扶養控除を受けるには、「生計を一にしている」という要件を満たす必要があります。「生計を一にしている」かどうかの判断基準は、常に生活費、学資金、療養費などの送金が行われているかであるため、必ずしも同居の必要はありません。
したがって、「養育費」が扶養義務の履行として支払われる場合、かつ、子が成人に達するまでなど一定の年齢に限って支払われる場合、常に生活費などの送金が行われていると判定され、同居していなくとも扶養控除の対象になります。
一方、一時金として支払われる場合、基本的に扶養控除は受けられません。
一時金として支払われる場合、子を受益者とする信託契約(契約の解除については元夫および元妻の両方の同意を必要とするものに限る)により、「養育費」に相当する給付金が継続的に給付されていれば、その給付されている各年について、常に生活費などの送金が行われている場合に当たり、扶養控除の対象となります。
なお、元夫婦の両者が同じ子を扶養している場合、扶養控除を受けられるのは、どちらか一人の親のみのため、注意が必要です。
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