一度申告したら変更不可 確定申告後に訂正できないもの
確定申告書の提出後に、手続きを失念していた、有利な選択をしていなかった、などに気が付くことはよくあります。
確定申告期限内であれば何回でも申告書を再提出できます(訂正申告)。申告期限が到来した後でも「修正申告」(税額が増える・還付額が減る)または「更正の請求」(税額が減る・還付額が増える)をできるものもあります。
しかし、確定申告が終了すると修正申告・更正の請求ができないものもありますので、いくつか例を挙げて説明します。
訂正・後からの適用ができないもの
1.確定申告で上場株式等の配当等を申告しなかった場合(申告不要を選択)
上場株式の配当等については、当初の申告期限に、「申告不要」、「申告分離課税」、「総合課税」のいずれかを選択します。
上場株式等の配当等は源泉徴収されており、申告不要制度を選択すれば所得があっても申告する必要はありません。
(国税庁ホームページ「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」より)
ですが、一定の条件の方が総合課税で申告すると、源泉徴収分が還付されることがあります。
一度配当所得を申告をせずに確定申告を終了した場合には、その後に申告不要をやめて、総合課税として配当控除の適用に変更することはできません。
2.確定申告をしたのに、住宅ローン控除を単に失念していた場合
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受けるためには、適用を受けようとする年分の確定申告書に一定の書類を添付して提出しなければなりません。
すでに確定申告が終了している場合は、「やむを得ない事情」があれば適用が認められますが、判例では、単なる失念については認めていません。
ただし、申告済の年の適用を受けることはできませんが、適用年数内に期限未到来で残っている期間があれば、その期間分は確定申告書に書類を添付して提出することで、適用を受けることができます。
3.控除対象扶養親族の所属の変更
確定申告を終了している場合には、控除対象扶養親族の所属を変更することはできません。
例えば、夫Aが確定申告で子Bを控除対象扶養親族として申告し、妻Cが給与所得者で子Dを控除対象扶養親族として年末調整している場合には、妻Cが子Dを控除対象扶養親族から外して確定申告し、子Dも夫Aの控除対象扶養親族として更正の請求をすることは認められません。
訂正・後からの適用ができるもの
1.譲渡所得を概算取得費で申告した場合(実際の取得費への差し替え)
株式などの取得費を概算取得費によって申告していた後で実際の取得費が判明し、その金額が概算取得費の金額を上回ることが証明された場合、更正の請求が認められます。
2.給与所得の特定支出控除への選択替え
給与所得者に必要経費を認める特定支出控除制度は、制度導入時は当初の申告時に選択したときに限り適用が認められていました(当初申告要件)。
現在では特定支出控除の当初申告要件は廃止され、確定申告後に特定支出控除の方が有利なことが判明した場合には、更正の請求により特定支出控除を適用することで、所得税の減額を求めることができるようになっています。
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