住宅ローン控除と譲渡特例
住宅ローン控除の適用を受けて新居を取得した人が、住まなくなってから3年目に旧居を譲渡して3,000万円特別控除の適用を受けようとすると、住宅ローン控除が過去に遡って適用されなくなるので、注意が必要です。
租税特別措置の趣旨は、住宅取得の促進
「公平・中立・簡素」は税制の基本原則ですが、国は、特定の政策目的実現のため、特別措置でこの原則を少し緩めて特定の税負担の軽減を図ります。住宅取得を促進するために、住宅関連でも多くの特別措置が設けられています。
住宅ローン控除は、住宅を取得する際の借入金の金利負担を税額控除で補填することで、住宅取得を促進するものです。
一方、居住用不動産の譲渡所得の3,000万円特別控除は、自宅を売却すると、代わりとなる居住用不動産を取得する必要があることから、譲渡所得に係る税負担を減らして新居取得を後押しするものです。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに旧居を売れば、譲渡所得から最高3,000万円までが控除できます。
他にも住宅に関する特例には、「買換えの特例」や「交換の特例」などがありますが、これらの譲渡特例の適用に際し、 制度の重複適用は想定されていません。
つまり、「住宅ローン控除」は「3,000万円特別控除」や「買換えの特例」などと併用できないというルールがあるのです。
会計検査院の指摘で重複適用が発覚
令和2年度(2020年度)改正前は、住宅ローン控除の控除を適用する年およびその前後2年間に3,000万円特別控除と重複適用することが禁止されていました。
ですが、新居に移り住んでからすぐに旧居を売らず、旧居に住まなくなってから3年目に譲渡した場合、禁止期間に該当しないことから住宅ローン控除と3,000万円特別控除の重複適用ができてしまうことを会計検査院が指摘しました。
このため、令和2年度(2020年度)税制改正により、2020年4月1日以降は、旧居に住まなくなってから3年目に譲渡した場合も重複適用ができないこととなりました。
重複の場合は、3,000万円特別控除を優先
重複して適用しようとすると、3,000万円特別控除が優先されます。3,000万円特別控除の適用を受けようとする人が、 住宅ローン控除を先行して受けていた場合、過去に遡って住宅ローン控除が適用できなくなり、修正申告(または期限後申告)が必要になるので注意が必要です。
これにより居住用不動産を買換えようとする人は、住宅ローン控除と譲渡所得の3,000万円特別控除のどちらを選択した方が有利になるか、慎重に検討する必要があります。
控除率1%の見直しも忘れずに
なお、このとき会計検査院から、住宅ローン控除適用者の借入金利が1%を下回ることが多く、ローンで住宅を取得した人の税負担が金利負担以上に減額される逆ざや現象が指摘されていました。
そこで令和4年度(2022年度)税制改正により、2022年以降に居住の用に供した借入残高に対する控除率は、1%から0.7%に引き下げられることになりました。
当法人では、個人事業主の確定申告、企業経営者や役員の確定申告なども行っています。
各種特例のどれを適用すれば最も有利になるのか、細やかなシミュレーションを行いますので、気になる点がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。